5フォーシスモデル

今日は、オンラインブローカーのインダストリーアナリシスをやってみました。5つの力モデルで分析した際の仮定は、その企業がオンラインブローカー業界でNo1.であるとして、種々の潜在的「脅威」について分析しました。

私の結論から言うと、この業界のリスクは「やや高い」という結果となりました。

5つの力モデル

①<新規参入リスク>
★ブランドロイヤルティーは、重要です。例えば、チャールズシュワブ、か、Eトレード等を想起すれば、これらの企業は有名でありブランドバリューがあります。新規口座開設するなら、こういった企業にしよう、と思う顧客は多いでしょう。つまり、この意味で、(No1ブローカーにとって)、新規参入の会社にシェアを奪われるリスクは、低いでしょう。

★絶対コスト優位については、製造業でないために、ラーニングカーブ効果が不透明なため、リスク不明としておきます。

★規模の経済については、あまりなさそうです。通常、航空機メーカー等、固定コストの比率が高い業界ほど、スケールメリットがありますが、オンラインブローカーにはあてはまりません。したがって、新規参入は比較的容易で、新規参入されるリスクは高い。

★消費者のスイッチングコストは、かなり低そうです。オンラインブローカーを複数持つことは可能です。口座を開くだけなら、ほとんど無料でできます。したがって、新規参入されるリスクは高い。また、ヤフーや、AOL等が、圧倒的なページヒット数を活かして、オンラインブローカー業界に入ってくることも十分想定できます。

★航空サービス業界ほどの強い政府規制は無いと思います。したがって、この観点からも、新規参入されるリスクは高い。

★★★以上を総合判断して、「新規参入リスクは高い」としました。

②<既存企業群の中でのライバル度合い>
★オンラインブローカー業界は、コンソリデイテッドな部分と、フラグメンテッドな部分の2つがあります。チャールズシュワブや、Eトレードはオンラインブローカーの中でも総合的サービスを目指しており、コンソリデイテッドな部類に入ります。その他、ブティック的なオンラインブローカーも多数誕生しているようで、これらは、フラグメンテッドな部類に入ります。コンソリデイテッドな部分では、「ゲーム理論」のような手数料引き下げ競争が起こるし、また、フラグメンテッドな部分では、純粋に価格競争が激しいでしょう。したがって、いずれにせよ、ライバル度合いは「脅威」です。

★需要構造に関しては、全世界的な株価下落を受け、一時的に低迷していますが、長期のトレンドで見れば、オンライン取引需要は今後も増加し続けることでしょう。というわけで、これは、「脅威」を緩和する方向に働きます。

★撤退障壁。Eコマース全般的に撤退障壁は低いと思います。恐らく、従業員数も少ないでしょから、割り増し退職金を払う必要も無ければ、店舗などの可視資産も極端に少ないので、撤退は容易です。したがって、この意味での「脅威」は少ないでしょう。鉄鋼業界と異なり、撤退したい企業はすぐ撤退するので、泥沼的な争いはありません。

★★★しかしながら、1番目の価格競争の激しさに比重をおいて、結論は、ライバルリスクはやや高い、とします。

③<消費者のバーゲニングパワー>
★文句なしに高そうです。一つの理由にスイッチングコストの低さがあります。
★★★したがって、この脅威は大きい。

④<サプライヤーバーゲニングパワー>
★ITインフラ、ソフト、情報ベンダー。このリスクは中立でしょうか。サプライヤーがそれほど強いとは思えません。

⑤<代替サービス>
★これは、普通の店頭サービスのフルサービスブローカーでの株式取引ですが、むしろ脅威ではありません。むしろ、フルサービスブローカーにとっての、オンラインブローカーが脅威です。
★★★したがって、このリスクは低いでしょう。

「結論」
以上を定性的に判断しまして、既存のオンラインブローカーにとって、リスクは「やや高い」という結論に達しました。

★★★★★過去のノート加筆修正情報★★★★★★
2003/03/12(水) 経営戦略 5つの力モデルの2番目の力。既存企業群の中でのライバルの度合い★★★以下のように加筆しました。★★★

②既存企業群の中でのライバルの度合い。ライバル力が弱ければ、企業は価格を上げ利益を得ることが可能となります。産業におけるライバルの度合いは、産業の競争構造、需要条件、産業における出口障壁により決定されます。

★ 競争構造は、「fragmented」か「consolidated」で計ります。フラグメンテッドな産業は多くの中小企業がひしめいているのに対し、コンソリデイテッドな産業は、少数の大企業による寡占か、極端な例では、独占企業により構成されます。フラグメンテッド産業は脅威となります。コンソリデイテッドな産業の場合には、分析はやや複雑になります。時に、寡占企業は、暗黙の了解で、価格協定に入ることがあります。(明らかに価格協定をやると、つかまります。)しかし、この暗黙の価格協定は、もろく、こわれやすい。アメリカのビール業界で、暗黙の価格協定がくずれました。ライバルに対して自社商品を差別化するために、広告宣伝費がかかり、モデルチェンジのためにR&Dの費用がかかります。いずれにせよ、寡占状態の産業における高いライバル度合いは、明らかに脅威となります。

★ ライバル度合いが高かったとしても、好景気のため、需要が増大している場合には、ライバルも皆売り上げる余地があります。しかし、不景気となり需要を取り合うような事態になると、ライバルはこぞって価格を下げ始めます。つまり、その商品に対する需要の低下は、脅威となります。

★ 出口障壁が高い場合には、企業はたとえ利益率が低くても撤退をせず、その産業にロックインされます。撤退に伴い、従業員に特別退職印を支払わなければならないとか、その企業に特有の生産設備を売却したい場合に、二束三文での売却を仕入れられるから、または、経営者心理として、撤退はしたくない、というのがあります。出口障壁が高い例として、アメリカの鉄鋼業界が良い例です。高い出口障壁は、脅威となります。



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